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ファームノート大臣賞に見る、牛の「勘」をデータに変える経営

ファームノート大臣賞に見る、牛の「勘」をデータに変える経営のニュース解説イメージ

ニュースの概要

酪農向けIT企業のファームノートが、農林水産省の第2回「食と農をつなぐアワード」で、スマート農業技術の開発・普及部門の農林水産大臣賞に選ばれた。評価されたのは、牛群管理クラウド、牛の行動を読み取るセンサー、ゲノム検査(=遺伝子の情報から牛の体質や能力を調べる検査)を一つの流れで提供している点である。繁殖、病気、乳量、コストに加え、二酸化炭素の排出量まで経営判断に使えるようにする取り組みだ。単体の機器ではなく、現場の記録から遺伝的な改良までをつないだ仕組みが評価された形である。

引用元: ファームノート、農林水産大臣賞を受賞――牛群管理・行動センサー・ゲノム検査を統合(PR TIMES / Infoseek News)

分析・見解

単体の機器ではなく三つをつないだ点が評価の核心

酪農のIT化は、これまで機器ごとの導入が中心だった。発情を知らせるセンサー、搾乳ロボットの記録、飼料の管理表と、データが別々の場所に散らばっていたのである。そのため、牧場主は画面を何枚も見比べて判断せざるを得なかった。

今回の受賞は、クラウド、センサー、ゲノム検査を一つの入れ物にまとめたことへの評価と読める。センサーが今日の牛の様子を拾い、クラウドが日々の記録を積み上げ、ゲノム検査が数年先の改良方針を示す。時間軸の違う三つの情報が同じ台帳に載ることで、初めて経営の道具になる。

繁殖の失敗は、そのまま利益の穴になる

乳牛は子を産まなければ乳を出さない。発情の見逃しが一回起これば、次の機会まで約三週間待つことになり、その間も餌代はかかり続ける。繁殖成績が牧場の収益を左右すると言われるのはこのためだ。

行動センサーは、歩数や反芻(=食べた物を口に戻してかみ直すこと)の変化から、人の目では気づきにくい発情や体調の崩れを知らせる。熟練者が長年の勘で見ていた変化を、数字として誰でも共有できる点が大きい。勘は人に付くが、記録は牧場に残る。

ゲノム検査は牛を選ぶ基準を数字に変える

ゲノム検査は、生まれて間もない子牛の段階で、将来の乳量や病気への強さの傾向を推定できる。従来は、娘牛が乳を出すまで数年待たなければ能力が分からなかった。早く分かれば、どの子牛を育て、どれを別の用途に回すかを早期に決められる。

育てるだけで餌代も手間もかかる以上、見込みの薄い個体に投資しない判断は、そのまま収益改善につながる。ここに日々の記録が加わると、遺伝的な素質と実際の成績のずれまで見えてくる。

二酸化炭素の見える化は、これから牧場の通信簿になる

受賞理由に排出量が含まれている点は見逃せない。牛のげっぷに含まれるメタンは、畜産の排出源として世界的に問題視されている。乳量あたりの排出量を減らす最も確実な道は、病気や繁殖の失敗による無駄を減らし、一頭あたりの生産性を上げることだ。

今後は乳業メーカーや小売りが、仕入れ先に排出量の開示を求める流れが強まるだろう。記録を持つ牧場は、取引で選ばれる側に回れる。逆に記録がなければ、説明すらできなくなる恐れがある。

ビジネスへの影響

導入の目的は省力化より、判断の早さにある

機器を入れる目的を、人手の削減だけに置くと失敗しやすい。本当の効果は、異変に気づくまでの時間が短くなることだ。発情の見逃しや病気の早期発見で一頭あたりの損失を減らせれば、投資は回収できる。導入前に、現在の空胎日数(=分娩から次の妊娠までの日数)や治療費を数字で把握しておくと、効果を測りやすい。

小規模牧場こそ記録の一元化から始めるべきである

大規模な牧場は専任者を置けるが、家族経営では記録が紙や頭の中に偏りがちだ。まずはクラウドで個体の記録を一か所にまとめ、そのうえで気になる課題に合わせてセンサーやゲノム検査を足していく順番が現実的である。

補助金と排出量の開示を見据えて準備する

スマート農業向けの支援制度は、データを活用した経営改善を条件にすることが多い。記録が整っていれば申請もしやすい。さらに取引先から排出量の提示を求められる日に備え、飼料や乳量の記録を月単位で残しておくことが、数年後の交渉力を左右する。

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